自力旅 旅のお供はカメラとGPS

ランニング、登山、自転車、街歩きなど、「自力」で楽しむアクティブな旅。国内&海外の「自力旅」を写真とGPSで記録していきます。

一番思い出に残る旅:家族と行った夜行列車の旅

f:id:tabi_light:20160321212807j:plain ふと、これまでの30数年間で一番思い出に残っている旅は何だろうと考えてみました。思い出に残っている「場所」ではなくて、思い出に残っている「旅」です。色んな海外への旅が頭によぎりましたが、結論は国内の旅でした。家族と行った夜行列車の旅です。

夜行列車の旅の良さ

今から四半世紀ほど前、小学生だった私は、夏休みに、両親と妹とともに、夜行列車で北海道へ出かけました。

夕方に、名古屋から特急しらさぎで福井県の敦賀駅まで向かい、敦賀から寝台特急「日本海」に乗車。翌朝、青函トンネルをくぐり函館へ。函館から特急北斗で洞爺駅へ向かい、駅でレンタカーを借り、洞爺湖周辺や日高地方、富良野などを巡るという旅でした。

夜行列車+レンタカーという組み合わせは、今から思うととてものんびりした旅です。その分、家族で濃密な時間をたっぷり過ごすことができたと言えます。

夜行列車ほど家族が濃密にゆっくり過ごせる移動手段は他にはあまり無い気がします。 開放型(個室でない)B寝台車という最もリーズナブルで、最も一般的だった車両では、上下にベットが2つずつで一部屋のようになっていました。通路との仕切りは特にないですが、4人で占有できると、まるで個室にいるかのような雰囲気。

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ちょうど私の家族が4人だったこともありますが、夜行列車で家族だけの時間をゆっくりと過ごせたのは今から思うととても幸せでした。 これは、新幹線や飛行機の旅では味わうことができません。新幹線では席を向かい合わせにすることもできますが、夜行列車ほどの濃密感はないですし、何よりあっという間に目的地に着いてしまうのでゆっくり過ごしたという気持ちにはならないでしょう。

実は、親の趣向もあって、夜行列車の旅へは何度か出かけています。トワイライトエクスプレスで札幌まで行ったことも。もちろん一番安い開放型B寝台でですが。。トワイライトエクスプレスなんてほぼ丸1日札幌まで乗り続けるんです。こんな長い時間、家族と一緒に過ごすなんて、今じゃあり得ないです。そういえば、トワイライトエクスプレスのB寝台には通路と寝台の間には透明な扉があって、扉を閉めればまさに4人だけの空間にすることも可能でした。ほんと濃密。

このように、夜行列車は時間がかかって効率は良くはなかったのですが、家族との時間をゆっくりと過ごせるというメリットがありました。

夜行列車の旅は「自力旅」の原点

家族でゆっくり過ごすことの素晴らしさを教えてくれた夜行列車の旅は、移動することのワクワク感も教えてくれました。目的地が近づくとともに移り変っていく景色を眺める、ただそれだけで楽しかったです。

また、夜行列車の夜を越す移動は、現実(日常)と非現実(旅先)を行き来するのに最適だったようにも思えます。朝起きたら見慣れぬ景色が広がっている、それは夢の世界に来たような気分でした。夜行列車は移動することの楽しさを教えてくれました。

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この移動する楽しさっていうのは、乗り物に乗ることの楽しさとはちょっと違うなと思います。ここでいう「移動」はあくまで旅に付随するもの。SLなどの観光列車やななつ星などの豪華列車など、乗ることそのものが目的となるような旅とは主従が違います。

「移動」好きは、極端にいえば、移動できれば移動手段は関係なく楽しめます。ただ、移動手段の中でも列車が、その中でも夜行列車がより移動を楽しむことができる、という感じです。わかりづらいですね。。。

私の好きな旅は、夜行列車の旅→青春18きっぷの旅→海外での列車の旅と移り変わってきましたが、列車に乗るのが好きというよりは、列車で移動することが好きだったのかなと思います。

そして、フランス・ロワールでのサイクリング旅をきっかけに、好きな移動手段がいわゆる「乗り物」から自転車・徒歩・ランという「自力」に変わっていきました。乗り物旅と自力旅は正反対のようですが、実は移動を楽しむという意味で共通しているのです。

夜行列車の旅から自力旅へ。夜行列車の旅は今の私の自力旅の原点です。

もう再現することのできない旅

さて、今夜をもって、夜行急行のはまなすの運行が終了します。 はまなすは、日本で唯一残る、開放型B寝台を連結した定期列車でした。

つまり、家族で楽しんだ思い出の寝台列車が日本から消えることになります。

前に北斗星が廃止になるってニュースが流れたときにも夜行列車に関するエントリーを書きましたが、いよいよこの時が来たかっていう感じです。

jiriki-tabi.hatenablog.com

残る定期寝台列車に、東京から高松・出雲市へ向かう、サンライズ瀬戸とサンライズ出雲がありますが、これらの列車には、個室の寝台車と大部屋のカーペット車しかありません。夜行列車の旅そのものは楽しめますが、私が子どもの頃に味わうことのできた家族の濃密な時間は味わえません。

夜行列車が、あおして開放型のB寝台が無くなったからといって、困る人は少ないでしょうし、私のように寂しがる人もあまりいないでしょう。

ただ、この夜行列車の廃止の動きが、世の中全体が「移動の効率化」へ向かっている一部だと考えると、けっこう大きな影響がありそうです。

移動は無駄な時間で、安く、楽に、早く着けたらそれでいいという流れ。 LCCの台頭で遠くへ安く早く移動できるようになりました。北陸新幹線の延伸や北海道新幹線の開業は移動の早さと楽さに寄与するでしょう。10数年間後に開通するリニアはさらなる早さを提供し、東京と名古屋とを多くの人の通勤時間より短い時間で結びます。

早さ、安さ、楽さだけを求める。乗り換え検索サイト・アプリが象徴してます。検索結果は、早い順、安い順、楽な順で表示され、人はその検索結果に従って乗り物に乗る。その検索結果に移動の楽しさなんて要素はありません。

この流れって、旅客輸送業の会社にとって、特に鉄道会社にとって好ましい流れなんでしょうか。短期的には利益をあげられるかもしれませんが、早さ、安さ、楽さだけで他の交通機関と勝負しなくちゃいけなくなります。それに、移動=面倒なもの、という固定観念が付いてしまうと、移動を無くそうという方向に向かうのではないでしょうか。旅離れにつながりそうですし、ビジネスにおいても出張はせずにビデオ会議で済ませてしまう人や、あるいは出勤せずに自宅勤務をする人が増えるかもしれません。

鉄道には鉄道の移動の良さがあるのに。夜行列車の廃止は、なが〜い目で見ると、鉄道会社が自分で自分の首を絞めているような気がしてならないんです。ま、私なんかの予感が当たるとは思えませんが。

もちろん、早く、安く、楽に移動できる交通手段が増えることが悪いとは思いません。ただ多様性があってもいいのかなと。自由度の大きさは旅を作る上で重要です。

話は逸れてしまいましたが、もうあの素晴らしい夜行列車の旅を体験することはとても難しくなってしまいました。将来、子供ができて、自分と同じ体験をさせてあげようと思ってもできません。寂しい。。

似たような旅はあるかな。。フェリーの旅が近い? うーん、ちょっと違うような。。