自力旅 旅のお供はカメラとGPS

ランニング、登山、自転車、街歩きなど、「自力」で楽しむアクティブな旅。国内&海外の「自力旅」を写真とGPSで記録していきます。

サンティアゴ巡礼路:巡礼路を分割して歩くメリットとデメリット

f:id:tabi_light:20160621004900j:plain 前回のエントリー「サンティアゴ巡礼路を歩く2種類の人々 - 自力旅 旅のお供はカメラとGPS」で書いたように、サンティアゴ巡礼路には、巡礼路を一度に歩ききる人たちと巡礼路を何回かに分割して歩く人たちがいます。本エントリーでは、この2種類のグループを比較した時の、巡礼路を分割して歩くメリットとデメリットについて書いていきます。

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サンティアゴ巡礼路を分割して歩くメリット

まずは、メリットから。

1.荷物が減らせる/余分な荷物を持っていける

一度に40日歩くとなると、荷物が多くなります。特に服。様々な気候条件に対応できるような装備が必要です。40日の間に季節が変わってしまうかもしれないですし、そもそもスペインの東から西まで歩くので地域によって気候が違うということもあります。

1週間程度に分割して歩けば、季節の変化も地域差も大きくありません。今の時代、インターネットで1週間くらい先の天気予報は調べることができますので、準備もしやすいです。また、服などが準備不足で前に進むことができなくなったとしても、一度そこで中断し、その地点から次回再開することも可能でしょう。

分割することで、荷物を減らせるわけですが、減った分、余分な荷物を持っていける、とも言えます。今回、僕はミラーレスカメラに単焦点レンズ4本という、サンティアゴ巡礼路を歩くとは思えない”無駄な”荷物を持って行ったのですが、これも分割した旅ならではと言えるでしょう。

2.体への負担が小さい

マイペースで歩いていくとはいえ、1週間も毎日歩いていれば、体に疲れがたまっていきます。脚を痛めてしまう人も少なくありません。

その点、分割して歩けば、体への負担が少なく、故障してしまうリスクは減らすことができます。荷物を減らせば、より楽に歩くこともできるでしょう。また、万が一、脚を痛めてしまい歩けなくなっても、『1.荷物が減らせる/余分な荷物を持っていける』と同様に一度そこで旅を中断し次回にその地点から歩き始める、という選択肢を取ることもできます。

3.ゆとりを持って道中を楽しめる

『1.荷物が減らせる/余分な荷物を持っていける』と『2.体への負担が小さい』の結果になるのですが、楽なので余裕を持って歩くことができます。巡礼路を歩いていて、時々立ち止まって後ろを振り返ることがあるのですが、その景色がまた素晴らしいんですよね。一気に歩いていく人は前へ前へという気持ちが強いでしょうから、あまり後ろは振り返らないのではないでしょうか。

僕の場合、写真を撮るのが好きなので、立ち止まって写真を撮る回数がとにかく多かったです。じっくりと趣味を楽しむには分割して歩いた方が良いのかなと思います。

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4.何年にもわたって旅を楽しめる

これはデメリットだとも言えるのですが、分割して歩くとサンティアゴ・デ・コンポステラまで何年もかかります。これを「早く終えたいのに何年もかかってしまう」と捉えるか、「何年も楽しめる」と捉えるかはその人次第。もちろん僕は後者の考え方です。

旅って物語のようなものだと思うんですよね。分割した1回の旅でも一つの物語になるのですが、それを束ねると各章の物語が複雑に絡み合った壮大なストーリーのようになるのではないかと。サン・ジャン・ピエ・ド・ポーからサンティアゴ・デ・コンポステラまでの全体で1つのシリーズものといった感じ。分割した旅と旅の間は途切れているようで実際のところストーリーはつながっているんだな、と今年旅してみて気付きました。何年にもわたる超大作。たった40日間で終わるストーリーよりも深みのある物語になると僕は思います。

5.仕事を続けながら行くことができる

何と言っても最大のメリットは、普通に仕事をしているサラリーマンにとって、長めの休みを取れば行くことができる点。

逆に言えば、お金さえあれば40日間の旅行なんて余裕でいけるという、学生や退職後の方はこのメリットは無いので、一気に歩く旅が合っているのかもしれません。僕も退職後には、一気に歩く「サンティアゴ巡礼の旅」へ出かけたいと思っています。

サンティアゴ巡礼路を分割して歩くデメリット

次にデメリットです。

1.トータルの費用がかかる

分割した分だけ、サンティアゴ巡礼路への交通費がかかってしまいます。ヨーロッパに住んでいる人ならともかく、日本からではよっぽど安いチケットでない限り往復で10万円は超えてしまいますから。一気に歩いてしまえば、交通費は1往復だけなので安く済みますよね。

ただ、僕はコストには時間という考えも入れるべきだと思うんです。得られるリターン(≒満足度)を考えた時、40日間も旅に一度に使うってちょっとコスパ悪いよなぁって思ってしまいます。一気に歩ききる旅に行くなら退職後にって思うのも、年老いれば単位時間の価値が下がるだろうから、っていう理由もあります。このあたりの「旅の期間の話」はまた別のエントリーで書けたらと思います。

2.達成感はほぼ得られない

サン・ジャン・ピエ・ド・ポーからサンティアゴ・デ・コンポステラまでを一気に800kmを歩ききればその達成感は途方もなく大きいのでしょう。一方で、分割して歩いた場合には、達成感はほぼ得られないと思います。隣に800km歩いてきた人がたくさんいるわけですから。どうしてもその人たちと比べて、自分の歩いた距離なんて大したことないって思ってしまいそうです。

『1.トータルの費用がかかる』のところで書いた「時間」というコストをかける価値があるかどうかは、この達成感を得たいかどうかが関わってくるのだと思います。僕は旅に達成感は求めていないので、どうしても得られるリターンを過小評価してしまいます。

3.途中で去るのが寂しくなる

一番のデメリットは、これでしょうか。周りを歩いている人の多くは、一気にサンティアゴ・デ・コンポステラまで行く人なので、どうしても羨ましいっていう気持ちがどこかで芽生えてしまいます。自分の旅は、彼らとは違う旅なんだとわかっていても、楽しそうに旅を続けていく彼らを見送るのは辛いものがあります。

4.旅の仲間は見つけづらい

一気に歩く場合と比べると、旅の道中で仲良くなる人を見つけるのは難しくなります。一気に歩いていると、同じように一気に歩いている人と話を共感しあえますし、どこかの宿であった人と別の町の宿で再開して仲良くなるということもより起こりそうです。何回かに区切って歩く人も一定数はいますが、巡礼路に来ている目的はさまざまなので会って話をしても共感はしにくいかもしれません。

また、多くの人と仲良くなると、別れがつらくなるので、『3.途中で去るのが寂しくなる』のデメリットが大きくなりますね。僕の今回の旅では、途中で去るのが寂しくなるからという理由で、他の人に声をかけるのをためらってしまったことがありました。寂しくなるのなんか気にせずもっと話しかければよかったかなぁと思うので、次回の続きの旅では気持ちを変えていきたいと思います。

最後の100kmだけ歩く旅は?

サンティアゴ巡礼を達成したことの証明となる「巡礼証明書」は、100kmを歩けばもらえることになっています。なので、10日くらいしか休みのないの人は、最後の100kmだけを歩こうと思う人もいるかと思います。

この場合、一気に歩く旅と分割して歩く旅のメリットをそれぞれ享受できるように思えます。ゆとりを持って楽しめるし、達成感も味わえる、と。

僕はまだゴールまでたどり着いていないのでわからない部分もありますが、直感的には最後の100kmだけ歩くという旅には、あまりメリットはなく、一気に歩く旅と分割して歩く旅の両方のデメリットの方が強いのではないかと思います。

歩くのは100kmだけなので確かに体への負担はあまりないかもしれませんが、ゴールのサンティアゴ・デ・コンポステラのあるガリシア地方は天気の良くない日が多く、景色も残り100km地点までと比べるとあまり良くないらしいです。なので、ただ辛いだけの旅になる可能性も十分あります。達成感についても、周りには800km歩いてきた人がたくさんいるので、あまり味わえないのではないかと。個人差はあるでしょうけど。

というわけで僕は、10日間くらいしか休みが取れない場合には、分割して巡礼路を歩くことをお勧めします。サンティアゴ・デ・コンポステラまで20年、30年かかるかもしれませんが、それはそれで素晴らしい旅になるでしょう。数十年続く旅って、なんて夢があるんだ!って思います。